電子書籍あり 天気予報はどのようにつくられるのか 天気予報の裏側では、こんなことが行なわれています! 地学・天文学 ★★★★★★★ 入門 初級 中級 上級 書籍を購入する 他のネット書店で購入する 著者名 古川武彦 ISBN 978-4-86064-597-7 ページ数 247ページ 判型 四六判 並製 価格 定価1,870円(本体1,700円+税10%) 発売日 2019年11月27日発売 立ち読み PDFファイル(6MB) 目次 PDFファイル(777KB) この書籍に関するお問い合わせはこちら 正誤表 内容紹介 私たちの暮らしは、天気の影響を大きく受けます。この先の予定を考える際に、天気予報を必ずチェックする方は多いと思います。また、相次ぐ気象災害や、遠い将来の話ではない地球温暖化も、生命や暮らしに直結する気になるテーマです。生きていくうえで必要不可欠な存在である天気予報。天気予報はどのようなプロセスを経て、私たちのもとに届くのでしょうか? 気象学や物理学の基礎から、観測や予測技術のことまで、気象庁で活躍した著者が「天気予報のいま」を紹介します。… もっと見る 著者コメント (「はじめに」より) 人はどこに住もうと、どこへ旅をしようと、天気の影響から逃れることはできません。晴れれば心が弾み、逆に雨が降ったり、風が強くなったりすれば外出もおっくうで不便です。まして台風や集中豪雨が予想される場合は、避難などの対策が必要となります。 「天気予報」は、人々の生活や社会活動に密接に関係する、将来の天気の状態(晴れや曇り、降水、風、寒暖、波など)を予測し、発表することです。この天気予報を行なう任務は、法律(気象業務法)によって気象庁に課せられています。その法律で「気象庁は気象、地象、津波、高潮、波浪及び洪水についての一般の利用に適合する予報及び警報をしなければならない」と定められており、津波や波浪も予報の対象になっています。 なお、1993(平成5)年に法律の一部が改正されて「気象予報士制度」が生まれ、現在では、テレビなどで気象予報士が独自に予報を行なっています。 日本で最初の天気予報は、現在の気象庁の前身である東京気象台が1884(明治17 )年6月1日に行なったものです。「全国一般、風ノ向キハ定マリ無シ。天気ハ変ワリ易シ。但シ雨天勝チ」というもので、予報の内容や地域的なきめ細かさは、現在とは比較にならないほど粗いものでした。ちなみに、当時の天気予報は、印刷物として諸官庁や警察の駐在所などに掲示されていました。 日本の天気予報は100年以上の歴史を持っています。その間、予報の基礎になる技術は、「地上天気図」や「高層天気図」をもとに予報者の経験や勘に頼る「主観的技術」から、数値予報と呼ばれる「客観的技術」へと進歩し、今や気象庁の行なっている予測の精度は世界でも高い水準を誇っています。 現在の予報技術は、気象や海洋についての観測技術の進歩と観測の自動化、気象レーダーや気象衛星などによるリモートセンシング(遠隔観測)の発達、そして何よりも予測計算を実行可能とするためのコンピュータの長足の進歩、さらに気象学や海洋学の発展などに支えられています。 さて、天気予報が私たちに届くまでには、大気や海洋の状態を「観測」し、それらのデータをもとに「予測」し、その結果を処理して「予報」として発表(提供)するプロセスが踏まれます。 なお、テレビなどで「天気予報」を発表などと言われますが、本来、予報とは「予測」の結果を一般に「公表(発表)」することを意味しますので、「天気予報を発表する」とは言わないで、「天気予報を行なう」が正しい使い方です。 本書の目的は、天気予報ができるまでの道筋である、気象および海洋の観測システム、観測データの予報中枢への通報、予測モデルの運用(計算)、そして最後の予報の作成に到る一連の流れを、通り一遍ではなく、できるだけ丁寧に、かつわかりやすくかみ砕いて解説することです。同時に、天気予報を支える根幹である、気象学や物理学の基礎的知識のほか、観測や予測の技術の発展の歴史なども紹介したいと思います。また、微分や積分などの数式を極力用いずに、理解ができるように心掛けました。 なお、波浪や津波を単独に扱った本はあまり見当たりませんが、本書では狭義の天気予報に留まらず、これらについても記述したいと思います。さらに天気予報に関連する法制度についても簡単に触れます。 本書は全体が9章で構成されており、第1章では、日々の天気予報の舞台である大気の組成、その中で起きているいくつかの現象とその仕組みを簡単に述べた後、大気の構造(気温と風の平均状態)を概観します。さらに、波浪や津波などの現象が起こる海洋についても触れます。第2章では、それらを地上で、また上空と宇宙から知るための種々の観測システムを紹介します。第3章は、天気予報の手法や特徴など、第4章は実際の予測技術である数値予報の根拠とアルゴリズム計算方法、第5章は今日・明日の予報である「短期予報」の実際と提供されている情報、第6章では週間予報や1か月予報である「長期予報」に用いられている、「アンサンブル予報」と呼ばれる、予測技術について解説します。また、台風の進路予報についても説明します。第7章では地球温暖化の予測、第8章は波浪と津波の予測、最後の第9章では、気象庁が行なうべき観測、天気予報や注意報・警報のほか、「気象予報士」制度といった、気象サービスに関わる法制度などを取り上げます。… もっと見る 古川武彦(ふるかわ たけひこ) 1940年、滋賀県出身。理学博士(九州大学) 気象研究所主任研究官、気象庁予報課長、札幌管区気象台長などをつとめ、現在は、気象学の普及などを目的とする「気象コンパス」を主宰。 著書に『わかりやすい天気予報の知識と技術』(オーム社)、『図解・気象学入門』(共著、講談社ブルーバックス)、『気象庁物語』(中公新書)など。※この情報は 2019.11.27 時点のものです。