2024.09.20 著者のコラム 濱田伊織のオーストラリアに暮らしてみれば―毎日がちょっとだけ新しい #3 著者 濱田伊織 第3回:オーストラリアの職場で成功する:「Collegiality(コリージャリティ)」って? (前回までの記事はこちら)#1 オーストラリアって、こんなに多彩!#2 アカデミアとオーストラリアでのキャリア—仕事も子育ても? こんにちは、濱田伊織です。今回は、オーストラリアのみならず、海外で楽しく働くためにぜひ知っておきたい大切なポイントについてお話しします。オーストラリアのような、いわゆる「英語圏」の職場で働くためには、英語力は必須です。でも、それ以上に大切なことがあるんです。それが、「collegiality(コリージャリティ)」、つまり「協調性」です。日本で一般的に「協調性」というと、「人に迷惑をかけず、周りとうまく合わせられる力」だと捉えられるかもしれません。Collegialityが意味する「協調性」は、決してそうではないんです。 Photo by fauxels: https://www.pexels.com/photo/photo-of-people-doing-handshakes-3183197/ 目次Collegialityって実際どういうこと?日常に根付くcollegialityの育て方フランクな交流の場まとめ:小さな行動が大きな変化を生む Collegialityって実際どういうこと? Collegialityとは、お互いをリスペクトしながら、積極的に協力して仕事を進める姿勢のこと。オーストラリアでは、この協調性が日々のちょっとした行動にしっかり根付いていて、チーム全体のパフォーマンスを高めてくれるんです。オーストラリアの職場で最初に驚いたのは、上司と部下、同僚同士の関係がとてもフラットで、「一緒にやっていく」ことがすごく大事にされていることでした。例えば、私が初めて参加したプロジェクトでは、内容が自分の得意分野と少し違っていて戸惑っていたんです。ミーティングで意見を出すのもためらっていて、ちょっと孤立してるなと感じていました。そんなとき、ある同僚が「どう思う?」と声をかけてくれたんです。その一言がきっかけで、自分の中の壁が少しずつ取り払われていきました。その後、みんなが積極的にサポートしてくれたり、私の意見をしっかり聞いてくれたりしたことで、安心してプロジェクトに取り組むことができました。結果として、大きな成果を上げられたのは、このcollegialityのおかげだったと思います。それ以来、私も会議で黙っている人を見かけたら、「話しすぎると場を独占しちゃうので、他の人の意見も聞いてみましょうか(I don't want to dominate the discussion, so perhaps we could hear from others as well.)」と意識して声をかけるようにしています。こうやって他の人にも発言を促すことで、全員がチームの一員だと感じられる場を作ることができるんです。 日常に根付くcollegialityの育て方 オーストラリアの職場では、協調性は日々の小さな行動に表れています。たとえば、「coffee run(コーヒーラン)」という文化。誰かがみんなのためにコーヒーを買いに行く習慣で、役職に関係なく全員が順番でやるんです。ある日、私が仕事に追われてバタバタしていたとき、上司がふらっとやってきて「コーヒー買ってくるけど、何かいる?」と聞いてくれました。正直、上司が部下のためにコーヒーを買うなんて、日本の職場では考えられないですよね。でも、このちょっとした行動が、お互いを気遣う文化を育んでいるんだと気づかされました。 Photo by Zeynep: https://www.pexels.com/photo/person-wearing-coat-holding-a-paper-bag-9668430/ さらに、オーストラリアでは「ニックネーム文化」があって、役職に関係なくみんながフレンドリーに名前で呼び合います。最初は戸惑いましたが、次第にそれが当たり前に感じるように。マネージャーでも「アン」や「ケビン」と気軽に呼び合うことで、開かれたコミュニケーションが生まれ、意見を言いやすい雰囲気が作られます。これもまた、collegialityが根付いている証です。 フランクな交流の場 そして、金曜日の午後には「Friday drinks(フライデー・ドリンクス)」という informal な飲み会が開かれたりします。オーストラリア人は、仕事とプライベートをしっかり分ける人が多いと思っていたので、最初はこんな交流があるなんて、ちょっと意外でした。 参加してみると、仕事の話だけでなくプライベートな話や趣味、将来の夢についてもフランクに話す場であることがわかりました。この informal な場で知った意外な一面や新しいアイデアが、後々のプロジェクトで活かされることも多かったんです。こうした時間が、チームの結束力を強めているんだなと感じました。 Photo by cottonbro studio: https://www.pexels.com/photo/photograph-of-people-raising-their-glasses-5529902/ まとめ:小さな行動が大きな変化を生む オーストラリアの職場での「collegiality」は、日々の小さな行動や習慣から生まれるものです。お互いに声をかけ合い、サポートし合うことで、チーム全体が一つになっていく。そして、それが職場全体のパフォーマンスを高める原動力となります。私も最初は、この協調性の重要さに気づかず、少し孤立してしまった時期がありました。でも、周りのサポートに気づき、自分から積極的に関わるようにしてから、信頼関係が強まっていったように思います。結局、コリージャリティとは、特別なスキルではなく、日々の小さな気遣いや行動の積み重ねなんです。日本の社会でも大切にされていることと、どこか通じるかもしれませんね。今回はオーストラリアの職場で楽しく働くためには、そんな協調性の文化を理解して、自分から積極的に取り入れていくことがとても大切、というお話でした。それではまた次回、お会いしましょう! (次回の記事はこちら)#4 日本とオーストラリアの「つながり」と「これから」 この記事を書いた人:濱田伊織2006年、オーストラリア政府エンデバー奨学金受賞者として、王立メルボルン工科大学修士課程でコミュニケーション学を専攻、2007年、同大学で修士号取得、成績優秀者として卒業。2012年、食と文化に関する研究を終え、メルボルン大学より博士号を取得。現在、モナシュ大学に在職。専門は社会学、文化人類学。主な研究テーマは、移民の雇用・労働問題、女性の進展を妨げる要因、食文化。主な著書に『CD BOOK 洗練された会話のための英語表現集』『CD BOOK ネイティブのひとりごと英語表現集』(いずれもベレ出版)、『中学レベルで洗練された英会話ができる本』(ダイヤモンド社)などがある。Website: https://research.monash.edu/en/persons/iori-hamadaTwitter: @hamada_iori 関連書籍 洗練された会話のための英語表現集 CD BOOK ネイティブとのコミュニケーションを円滑にする1050例文。 濱田伊織英会話・表現集 ネイティブのひとりごと英語表現集 CD BOOK 自然でカジュアルなネイティブのつぶやきを大量に収録。朝から晩まで日本語を介さず、心の中をすべてネイティブ化できる! 濱田伊織、ウォーレン・フィッシー英会話・表現集 英語で円滑に[世間話]をするための会話術 CD BOOK 合間でのちょっとしたトークでネイティブとのコミュニケーションをより深く。 濱田伊織英会話・表現集
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