2021.03.12 著者のコラム Let’s enjoy the process!(陽は必ず昇る!) 著者 英語教師 植田一三 目次第2回「英和辞典の意味につられず、効果的に英語の語彙を使う心構え」英英辞典を引く運動を広めてきた20年 第2回「英和辞典の意味につられず、効果的に英語の語彙を使う心構え」 意味を知っていると思い込んでいる基本単語こそ英英辞典の定義を見比べる! 英語を発信する上で大きな弊害の1つは、英和辞典や書かれた和訳で英単語の意味を誤解したまま使ってしまうことです。英和辞典の英単語の和訳は、元の英単語に意味的に近い日本語を集めたもので、英英辞典の説明的な単語の解説と意味のずれがあるものがほとんどです。よって英和辞典に頼っていると、英単語の意味の広がりを誤解し、どんどん「英語音痴」になっていく可能性があります。そこで私は、意味を知っていると思い込んでいるような高校で習う基本単語も、意味にギャップがあるものは指摘し、英語のプロに対しては、英英辞典数冊の定義を見比べて、自分の語感からベストのものを選ぶか、いい所を合体するか、不完全なら情報を加えて、独自の定義を作るように指導しています。 例えば、educationの一般的な英和辞典の和訳である「教育」は「教え育てること、知識を与え個人の能力を伸ばすこと」と、教師からの一方的な指導の意味になっていますが、英英辞典の定義では“the process of receiving and giving systematic instruction[the process of teaching and learning], especially at a school or university”とあり、「体系的に教えたり学んだりすること」で一方的な指導とは限りません。ちなみに一方的な指導という意味合いで「英語教育」という場合は、”English teaching”というのがベターです。またproudは、ほとんどの英和辞典では「誇りに思う・自慢の」となっていますが、英英辞典では、feel pleased about something good that you possess or have done, or about something good that a person close to you has done.とあるように、「自分の所有物や行為や自分に近い者の偉業に対して「とても嬉しい心の状態」です。よく親が子どもをほめて、I’m so proud of you!と言いますが、それは「すごい!嬉しいわ!」に近いものです。 また、完全に誤解して用いていることが多いのが”treat”です。この語を、英和辞典の意味から「治療する」と覚えると、cureと混同してしまい誤用する可能性があります。「治療」という日本語はあいまいで、cureは「完治させる」のに対して、treatは「治療を施しただけで直ったとは言っていない」ので使い方要注意です。さらに、relativeを「親戚」(ロングン)、”behaving in a kind and pleasant way because you like sb or want to help them(オックスフォード)”と、「相手のことが好きでお話がしたい、助けになりたいので親切に振舞う非常に感じのいい人」で、「親友のように優しくしてくれる」に近い語です。politeも英和辞典にあるような「ていねいな、礼儀正しい」といった弱い意味ではなく、”behaving or speaking in a way that is correct for the social situation you are in, and showing that you are respectful and considerate to other people’s needs and feelings”(状況に応じた振舞いができ、相手を立てて、気持ちや願望に対して思いやりがある)で、「マナーがよく、人への思いやりを持って、丁重に接する」に近い語です。interestingも、「興味のある」といった弱い意味ではなく、「まれな珍しい、心が躍る、未知の事柄の新たな発見で、思わず目が行ってしまう、もっと知りたい」で、Interesting!と強調すれば、日本語の「うそー、これって何なの?」に近くなります。 英英辞典を引く運動を広めてきた20年 このように、学生の時に英和辞典や単語帳を通して単語の意味をつかみ、記憶してしまっている場合は英単語をうまくこなせなくなるばかりでなく、覚え直すのは何倍もエネルギーがかかってしまうので、20年前に英英辞書の入った電子辞書が発売されて以来、英英辞典を引く運動を自分の学校アクエアリーズだけでなく様々な組織に広めてきました。 記事を書いた人:植田一三(うえだ いちぞう)英語の最高資格7冠突破校Aquaries School of Communication学長。英語の百貨事典を10回以上読破し、辞書数十冊を制覇し、洋画100本以上の全セリフをディクテーションするという「超人的」努力を果たす。ノースウェスタン大学院・テキサス大学院(コミュニケーション学部)を修了し、同大学で異文化間コミュニケーションを1年間指導。Let’s enjoy the process!(陽は必ず昇る)をモットーに、31年の教歴において、英検1級合格者を1600人、資格3冠(英検1級・通訳案内士・TOEIC980点)突破者を200名以上育てる。主な著書に、『英語ライティング至高のテクニック36』『英語で経済・政治・社会を討論する技術と表現』『発信型英語スーパーボキャブラリービルディング』などがある。 英語ライティング 至高のテクニック36Amazon 2,090円(2021年03月12日 13:08時点)