2022.10.14 著者のコラム 慣用句から学ぶ韓国語 #2 著者 徐旻廷(ソ・ミンジョン) 「콩밥을 먹다(コンパブル モクタ)」=「豆ご飯を食べる」 画像出典: https://namu.wiki/w/%EC%BD%A9%EB%B0%A5 「너 콩밥 먹고 싶냐?(お前、豆ご飯食いたいのか)」「콩밥 맛 좀 볼래?(豆ご飯、味見してみるか)」「콩밥 먹일 거야.(豆ご飯、食わせてやるぞ!)」 上の会話文は、韓国のドラマや映画で相手を怖がらせたり、脅かしたりする場面でよく登場するセリフです。美味しくて栄養たっぷりの「豆ご飯」がどうしてこんな恐ろしい場面に登場するのでしょうか。 朝鮮半島では、かつて刑務所にいる受刑者に提供した食事が「豆ご飯」だったといいます。当時の豆は「大豆」を指します。白米の値段が高かった時代、大豆は栽培しやすかったため、値段も安くてよく食べられる穀物でした。このような理由で、受刑者には大豆に麦などを混ぜた「豆ご飯」を提供したのです。今の「豆ご飯」とは多少違うイメージかもしれませんが、この時から「豆ご飯を食べる」というのは、「刑務所暮らし」を意味することばになりました。 日本でも大ヒットした映画『7番房の奇跡』のワンシーンで、主人公が豆が嫌いな娘に「豆にはビタミンが含まれているから食べなさい」と言うシーンがあります。主人公の素晴らしい演技力もあり、この映画の中で一番の名場面だと言われています。おそらく、刑務所で豆ご飯を食べていたという事実を念頭に入れた場面だと言えるでしょう。 映画のように、今も刑務所で「豆ご飯」が提供されるのでしょうか。 時代の流れとともに、大豆と麦が混ざった「豆ご飯」から、次第に白米の比率が高くなり2014年以降は100%米ご飯のみを提供しているそうです。時代が変わって、今の刑務所では豆ご飯が食べられないのですが、韓国人にとって「豆ご飯」は相変わらず刑務所で提供される食べ物として認識されています。今は、栄養たっぷりの健康食であるという理由から白米より豆ご飯を好んで食べる人も多いですが、「豆ご飯を食べる」ということばには、まだそのニュアンスが残っています。時代が変わっても、慣用的に使われることばの変化はなかなか簡単ではありません。「豆ご飯」の地位を上げたいですね! 映画『親切なクムジャさん』劇中では、出所したクムジャさんに豆腐を渡している場面があります。ここでクイズです!なぜ出所した人に豆腐を手渡してたのでしょうか。 韓ドラファンの皆さんなら、とても気になる場面だと思います。 豆からは豆腐が作られますが、豆腐からは豆を作ることはできません。豆で作られた豆腐は、二度と豆に戻ることはできないのです。刑務所から出所したばかりの人に二度と刑務所に戻らない人になりなさいという意味があると言われています。豆と豆腐の運命が非常に面白いでしょう! 記事を書いた人:徐旻廷(ソ・ミンジョン)慶應義塾大学、上智大学など非常勤講師。専門は社会言語学(朝鮮語)。博士(学術)。 ダイアローグで身につける 韓国語の言い回し・慣用表現350 [音声DL付] Amazon 2,640円(2022年10月13日 18:03時点) 関連書籍 ダイアローグで身につける 韓国語の言い回し・慣用表現350 [音声DL付] 慣用句を通して、より韓国語らしい発想と表現を身につける! 髙木丈也、金周祥、徐旻廷韓国語