2004.07.01 著者のコラム Quizでわかる中学数学深川和久 「数学が好きだった」という人であれば、数学の成績がよかった人を中心にかなりいるでしょう。でも、「数学は楽しい」「数学は面白い」と思っている人はそれほど多くはないはすです。 元来、数学は入り口が狭く、またなかなか理解しにくいところがあるため、多くの人にとって、数学は、その名前を聞いただけで頭が痛くなり、かつての試 験の悪夢を思い出させるくらいのものでしかありません。 ところが、その壁を乗り越えると、数学もなかなかのもの、すくなくとも数学に対するコンプレックスはなくなり、人生のひとときの楽しみをもたらしてくれるお友達くらいにはなります。本当は、生活していく上で数学なしだときわめて危険な誘惑が多く、危険回避にとっても数学はなくてはならないものなのですが… そこで、この壁を低くすることによって、「数学は面白い、楽しいという思 いをちょっとでも味わっていただきたい」、そういうねらいがこの本の根底にあります。 この本は、学校でかつて学習した数学を、クイズ形式でもう一度見なおしてみようというものです。 「もう一度」ということと、「クイズ形式」ということがポイントです。 まず、「もう一度」ということ、これはきわめて効果の高い試みだと思います。 たとえば本を読むとき、一読しただけでは、茫とした全体のイメージは残る ものの、いざ何が書かれていたかと自問しても確固とした答えにつまります。 ところが、再読してみると、全体の流れや細部の意味がはじめて鮮明なイメージを持ち、その1冊の本の内容がようやく形をつくってきます。 映画を見るときも、2度、3度と見直して初めて、個々のエピソードの意味を知ることができます。 テレビのお笑い番組だってそうです。同じネタを何度となく聞いても、飽きないどころか、次の展開の予測可能性がかえってその面白さを倍増させます。 数学にとって、この「もう一度やり直す」という試みは特にチャーミングなものです。数学は、一見すると結果オーライの学問であり、「こうすれば解ける」というスタイルで学習を続けていきますが、「なぜそうするのか」という疑問には何も答えません。ところが、数学をもう一度やり直してみると、「なぜそうするのか」のしくみがだんだんと見えてきて、数学が俄然おもしろくなってきます。 ところで、数学をもう一度やろうという人の大半は大人です。その大人になった今こそ、学生のころに比べて、決定的に有利になっていることが2つあります。 1つは、学生時代よりも多くの経験を積んだ結果、ものの見方や理解力が格段に高まっているということです。 もう1つは、数学の問題を解いて試験でいい点をとるという課題からフリーであるということです。 今こそ、数学の楽しさを体感できる絶好のチャンスだといえるのです。 そこで、この本では、そのせっかくのチャンスを先細りさせないために、かつて教科書でやったのとは違ったタッチにして、もっと日常的で興味の持てる題材を利用するように心がけました。 さらに、試験で合格点を取るための勉強ではないという立場を最大限利用するために、あえて逆説的にクイズ形式にしました。 こうすることによって、テーマがハッキリします。自力で解けたら、それはこの上ない快感。しかし、解けなくてもかまいません。解けそうにないと感じたら遠慮なく答えや解説を見てください。試験ではないので誰からもとがめられるわけではありません。誰が先に考えたかなど問題ではなく、ちゃんと「わかり」、それを頭の中に残すことができればそれでよいのですから。 なお、中学数学の主な項目全体を取り上げ、クイズだけでなく、関連項目のまとめを随所に入れました。また、あまり数学に馴染みのない人でもわかるように解説することに心がけました。 この本を契機として、1人でも多くの人が「数学は楽しい、面白い」と思って下さることを望んでいます。 関連書籍 Quizでわかる中学数学 身近な話を題材にしたQuiz問題と解説で、中学数学の”なぜそうなるのか”がわかる。 深川和久数学