2007.10.24 著者のコラム 定年男の数学物語江藤邦彦 私は埼玉県内の高校の数学教師として38年間勤務し、2002年に定年退職しました。その後、第二の人生ということで喫茶店「びわの樹」をオープンし、店主として現在に至っています。 小さな喫茶店ですが、びわティー、びわ茶葉などが人気を呼んで、近所の主婦の方々が気軽に来店してくれます。 ところで、喫茶店には、定年退職した夫を持つ主婦の方々がよく来店します。現在、団塊世代の大量退職の時代を迎えて、こうした主婦の方々の来店が増えています。定年夫を持つ主婦の方々が来店すると、時々、夫への不満の声が聞こえてきます。 「主人と毎日顔を合わせているのはつらいわね」 「ほんとね。うっとうしいわ。一日中家にいてテレビの前でごろごろしているんですもの」 「主人の三度の食事を用意するのがたいへんよね。毎日主人の食事に振り回されている感じだわ」 こうした主婦たちの不満が、ときにはやぶれかぶれのようになって、 「いっそのこと、別れちゃおうかしら」 などという物騒な声となって聞こえてくることもあります。 私も定年退職した後、妻から、 「もっと身だしなみに気を遣ってよ。毎日、ヨレヨレのジャージばかりじゃみっともないわ。よごれたおじいさんみたいよ」 などなど、いろいろと小言をいわれました。 これまで長い間、家族のために一生懸命に働いてきたわけだから、定年後、妻からいたわりとやさしい言葉があると思っていたのですが、それはまったくの誤算でした。 では、定年男がもうひとつの人生を豊かにして、しかも夫婦の関係をうまく築いていくには、いったいどのような生き方をしていったらよいのでしょうか。 この本は、定年男の第二の人生の生き方を見つけるのに、ヒントを与えてくれる本になっています。 この本の主人公林邦夫は、定年後、何もすることがない日を送っていたのですが、暇つぶしに公民館の図書館へ行きます。その図書館でたまたま数学の本を開いたところ、邦夫はすごくきれいで、おもしろい数の式を見つけました。これがきっかけとなって、邦夫は整数論の世界に魅せられていきます。そして、数学を趣味にして勉強を続けてみると、邦夫の心の中にさわやかなそよ風が吹いてきたのです。邦夫は言います。 「定年後の生き方が少し見えてきたようだ」 どうぞ、ご一読ください。 関連書籍 定年男の数学物語 主人公・邦夫と数学が奏でるちょっとロマンチックなストーリー 江藤邦彦数学