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気楽に物理
横川淳

写真:気楽に物理

「気楽に物理」というタイトルをご覧になった方は、私が本書に込めた思いをどのように想像されるでしょうか。「物理を楽しんでほしいと思っているのだろう」あるいは「物理の面白さを伝えたいと思っているのだろう」というふうに想像されるかもしれませんね。およそその通りです。でももう少し思っていることがあります。

そのことには後で触れるとして、私が物理のどういうところを面白いと感じているか、ちょっとお話しさせてください。

私がはじめて物理に触れたのは、高校生のときの学校の授業でした。最初は訳もわからず「公式」を暗記し、数値をあてはめるような勉強をしていました。もちろんそれが面白いはずもなく、意味もわかるわけもなく、苦痛に満ちた授業時間でした。ところが、あることがきっかけで、すべての公式につながりがあることがわかり、意味もはっきりとわかるようになったのです。このことをきっかけとして、まるで頭のスイッチが切り替わったかのように物理の内容がわかるようになりました。そして「わかる」ことは「面白い」のだと気づきました。

その後、大学・大学院と進学し、博士号を取得する過程で、「わかる」ことの面白さを何度も感じてきました。

この「わかる」感じを、もっと多くの人に伝えてみたい。そう思いながら本書を執筆しました。

本書を執筆しながら、私自身にも新たな「わかる」体験が何度も訪れました。例えば、「地球のうらがわを感じる」というお話を書いたことがきっかけで、夜に月を見上げることが多くなりました。そうするとオリオン座の右のほうに妙に明るく輝く星があることに気づくのです。明るい星といえば「おおいぬ座のシリウス」と習った覚えがあるのですが、調べてみるとこの星はなんと木星でした。おまけに、シリウスはオリオン座のすぐ左のほうにあるということもわかりました。もちろんそれまでも、オリオン座、木星、シリウスといった知識はあったのですが、それらの存在をあらためて「わかった」ような気がしました。

木星を毎日見ていると、少しずつオリオン座から離れていっている様子もわかりました。あれほど明るい星が他の星と違う動きをしていたら、そりゃあ「惑う星」と書いて「惑星」と呼ばれるようになるよなあ・・・と、この年になってようやく「わかった」のです。

さて、最初の話に戻りましょう。私が本書に込めた気持ちは、「物理の目で身のまわりの現象を見て、『わかる』面白さを感じてほしい」ということです。そして、できることならば読者ご自身で、新たな「わかる面白さ」を発見してほしいと思っています。本書がそのための第1ステップになることができれば幸いです。

横川 淳

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