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IT時代の実務日本語スタイルブック
山本ゆうじ

写真:IT時代の実務日本語スタイルブック

「実務日本語」。
なんだか難しそう、と思われるかもしれません。でも、実際に読んでいただくと、すいすい読んでいただけるはずです。「ちょっと題名は硬いけど、読んでみると読みやすい」といった声をいただいています。
文章の本はすでに山のようにあります。しかし、なかなか肝心なことが書いていません。「文を短くするといい」って、具体的には何文字だったら短いの? 「読点はリズム良く打て」と書いてあるけど、リズム良くってなんなの?――そう思いませんか?
文章技術の本を読まれた方には、本書でも「どこかで読んだことがある」ポイントを目にするかもしれません。しかし、本書が類書と違うのは、「読んだことはある」ポイントを、実際の文章で実践する、合理的で具体的な方法をご紹介していることです。
本書のアプローチは、よくある「正しい日本語の本」とは違います。本書には、「聞く」と「聴く」の違いのような、言葉の使い分けのリストは載せていません。それも無視はできませんが、どちらかというと表面的な問題です。日本語の実務文章にはもっと重要で本質的な問題があります。それは「分かりやすいか」どうかです。いくら「正しく」ても、理解できなかったり、誤解されたりしては意味がありません。
本書は、「実務翻訳者が書いた日本語作文」の本です。私がこれまでプロの翻訳者向けに書いてきた連載記事が出発点となっています。約17万字、雑誌のコラムにすると50本分の、文章技術のノウハウをぎっしり詰め込んでいます。しかし、本書の対象は翻訳者に限りません。ビジネスパーソン、学生、翻訳者のそれぞれの方に本書を役立てていただけます。
本書で扱う「実務文章」には、創作文章以外のすべてが含まれます。ふだんの仕事や勉強、生活で使うほとんどの身近な文章が対象です。
みなさんは、家電の説明書などはよく読むほうですか? 私は、道具は最大限に使いこなしたいので、説明書は注意して読みます。しかし、説明書があいまいな言葉遣いで書かれていて、操作に試行錯誤が必要なこともよくあります。そんなとき、「一度読めば分かるように書いてほしい!」と叫びたくなるのです。このような「悪文を撲滅したい」という強い気持ちから本書は生まれました。ただ、悪文を読み手として読んで困った経験は、自分が書き手になったときにはなかなか活用できないものです。本書では、読み手の立場で考える方法の他、書き手自身にとって直接利益のある、長い文章を楽に書く方法、Microsoft Wordをうまく活用する実践的なコツもご紹介しています。もちろん、読み手の利益、つまり読み手にしっかり理解してもらうことは、書き手にとっての利益でもあります。
私はもともと、日本の大学での卒業論文では、言葉よりも言葉にできない「イメージ」について関心がありました。その後、シカゴ大学の修士課程に行き、そこで受けた講義を通じて、「言葉は使い方しだいでどのようにも使えるツール」ということを強く実感しました(著者プロフィール)。
なぜ、私のような翻訳者が日本語の本を書いたのだと思われますか?
実務翻訳者が英日翻訳するとき、読むのは英語ですが、書くのは日本語ばかりです。翻訳者は、およそ可能な限り、大量の日本語を毎日書きます。なぜなら、語数計算の料金制では、短時間で可能な限り大量に訳すからです。また、翻訳者は、日英翻訳で、下手な日本語文章を外国語に翻訳するのがどれだけ大変かということを、いやというほど知っています。
このような実務文章では、「名文」は求められません。むしろ、名文はじゃまになります。1箇所だけ、こなれたうまい表現ができても、企業で使う実務文書では、そこだけ浮いてしまうのは困りものです。世の中で名文が必要なのは、他の場所です。かといって、実務文書では悪文は許されません。誤字脱字、分かりにくい文章ばかりだと、仕事がなくなってしまいます。
では、実務文章で必要なものはなんでしょうか。それは、分かりやすい「良文」を書くことです。英日翻訳をしていると日本語の問題に日々出くわします。「どう書けば分かりやすく、誤解のないよう書けるか」――それを毎日、毎時間、真剣に考えています。実務文章では、限られた時間の中、自分で誤りを見つけ、最小限にする必要があります。作文技術の本はたくさんありますが、「分かりやすさ」について合理的な取り組みをしている本は、なかなかないと感じます。また、電子書籍が増えつつあるのに、電子文書の良さを活かす文章技術は紹介されていません。このような文章技術、「仕事のツールとしての日本語」は、翻訳という分野を超えて、文章を書く、多くの方に活用していただけるはずです。本書では、文法用語はほとんど使わずに、実践的な作文技術を追求しました。
ぜひ、本書で、「軽くて、丈夫で、コンパクトで、精密な日本語」の作文に挑戦してみてください!
関心を持たれた方は、ぜひ本書の「はじめに」、公式ページもご覧ください。Twitterのフォローもお待ちしております。

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