2015.01.05 編集部コラム 著者は編集の大先輩 2014年の最後に担当した著者は英語辞典の元編集者です。本屋大賞をとった『舟を編む』は著者のおきまりのお勧め本です。まさに辞書の世界そのものなんだそうです。編集者時代の話を伺うと、同じ出版でもいろいろ規模が違うことに驚かされます。印刷は、ベレではよほどの厚本、部数でなければ1日で済んで、半分の時間はインクを乾かす時間です。英語の辞書はなんと、新聞などを印刷する輪転機をフル回転させて最低でも3カ月かかるそうです。そして、増刷の話になったとき、20万部、30万部の増刷がふつうであったのが、中学、高校でも紙の辞書から電子辞書へとかわっていき、定年間際で営業部が決めた増刷部数はたった2万部。編集長だった著者は「思わず〈ばかにするな!〉と口からもれてしまった」、その話を聞いていた私も、ベレのそれとはケタが違いますが、怒りみたいな感情が同じようにこみあげてしまいました。このような辞書への強い思いは、昔も今も同じようにあることをこのお話だけじゃなくビシビシと伝わってきます。辞書だけに向き合って40年、その辞書の魅力を伝える著書が、12月、本になりました。この本で、著者としての増刷というのがどんな気分なのかを、ぜひあじわってもらいたいです。 ワタヒキ