2016.09.21 編集部コラム 著者紹介は本を買う決め手になる? 本のタイトルを見ておもしろそうと思い手に取りながら、本の最後のページに載っている著者紹介の一言で棚に戻した本があります。 著者の略歴、著作の紹介のあとに「ビール、詩吟、長渕剛が好き」、この言葉に反応して、ちょっと引いてしまいました。長渕剛が好き?熱すぎないかな、この著者、おもしろそうだけど押しの強さは少し苦手、やっぱり棚に戻そう。本のタイトルは『村に火をつけ、白痴になれー伊藤野枝伝』(岩波書店)新進気鋭の政治学者栗原康が書いた伊藤野枝の評伝。アナーキストの大杉栄と恋も仕事も激しくたくましく生きた伊藤野枝を弾けるような文章で歌い上げた本です。後日、やっぱり読みたくなって結局買ってきました。人にも勧め、今年読んだ本の中でかなり印象深い本の一冊です。 一般的に、本の最終頁にある「著者紹介」は読者にとっては非常に重要な情報で、最終的に買うか買わないかを決める要素になったりする、著者からもらった原稿をそのまま使ったりするような手抜きはしないように、とベテラン編集者から繰り返し聞いているのですが、今でもその加減がわからず悩んでしまいます。本に対する先入観が入らないような、無色透明の淡々としたほうが好みという人もいます。いや、やはり著者の魅力や個性が伝わってくるような引っ掛かりがあったほうが興味を持って読めるという人もいます。どちらもそれぞれ説得力があります。魅力的な「著者紹介」はどんなものか、もっと掘り下げて考えてみようと思います。今思えば、『村に火をつけ、白痴になれー伊藤野枝伝』の「著者紹介」は歌い上げるような文体にぴったり合ったちょっとスパイスの効いた見事なサンプルだったかもしれません。少なくとも、私は一度は反発し、それでも強くひかれて買ってしまったのですから。 ワキヤマ