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著者に聞く『過去のStudy Routine教えてください!』#2

第2回:恒石昌志 先生

5月の著者コラムは特別企画『過去のStudy Routine教えてください!』です。全3回にわたって3名の英語学習書の著者に10の質問を投げかけ、その実態に迫ります。第2回は恒石昌志先生。Study Routineは一生継続予定!


Q1:典型的な1日を教えてください。

現在の主な休日のスケジュールです。

09:30  起床
(朝食は抜くか、プロテインのみ)
10:00  都内へ出かけウォーキング
(できるだけ行ったことのないところに行きます。歩きながら日本語のニュースを含めオーディオブックを聞きます)
13:00 昼食
(できるだけ友人・知人と外食するようにしています。相手が中国語ネイティブであれば中国語でずっと話したりします)
16:00 カフェでコーヒーを飲みながら読書、メール返信など
(主にイギリスのThe Economistを毎週読んでいます)
19:30 夕食
20:30 ジム
(ジムでは洋書のオーディオブックか英語のニュースを聞いています)
22:00 帰宅し自由時間
(読書・映画・スカイプを使った中国語会話などしています)
02:00 就寝

平日は仕事で欧州・米国両方と関わりがあり、特に日本時間の深夜に米国と打ち合わせをすることが珍しくないため、夜は遅めで、休みの日はゆっくり寝ることが多いです。
大事にしていることは7時間半、少なくとも6時間の睡眠時間の確保です。睡眠不足はすべてのパフォーマンスに影響するので、仕事で何があっても死守するようにしています。

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イギリスに仕事で滞在した時の写真
運河に沿ってルーティンのウォーキングをしながらBBCを聴いていた

Q2:最も勉強していた時期にどういう学習をしていましたか? また、それにどのくらい時間をかけていましたか?

最も英語に精力的に取り組んでいたのは17歳、高2のときです。当時は、アメリカ大統領の就任演説の原稿が冊子になったものと音源CDがセットで4000円ぐらいで売られていました。
今では、そのような音源はYoutubeですぐ出てきますが、私が学生の当時インターネットは存在しましたが、黎明期でした。
最初はケネディ大統領の就任演説を丸覚えしました。結局クリントンから始まり過去に遡りルーズベルトの就任演説を覚えました。

その当時の私は偽英語恐怖症に取り憑かれており、受験参考書の英語は、ホントは使われていない古臭い英語だということをどこかで聞き、実際に英語のネイティブスピーカーの口から出た英語でないと信用できないというこだわりを持っていました。
当時の私の英語力では、このような表現は文語だから会話では使われない、この表現は古臭くてあまり使われないなどは判断できませんでした。完全に五里霧中、疑心暗鬼の中、洋画鑑賞と欧米人のスピーチなら信用できると思って受験参考書などから離れ独自の学習を始めました。

一日3~4時間は外出中にイヤホンで英語を聞いて、家で2~3本洋画を見るぐらいの時間をかけていたと思います。
この当時暗記したスピーチの長さは恐らく数時間分になります。今でも、欧米人との会話の際に「それはXX大統領が就任演説でこう言ったんだけど」などと引用して相手を驚かせたりして、知的財産となっています。

Q3:学習のきっかけとなる目標はありましたか? どんなものでしたか?

これはまったくなかったです。
私は高知県の小さな漁村生まれで、周りに英語ができる人も海外に関係する仕事をしている人もいませんでした。
ただ中学校・高校時代の私に渦巻いていたのは、周りの大人への反発と田舎を出たいという思いでした。とにかくコンサーバティブで古く閉鎖的な考えに反発し、それに対向すべく打ち込めるものを探していて見つけたのが英語だったのだと思います。

Q4:ご自身の学習においてもっとも役立った1冊を教えてください。

当時好きだったのは講義形式で、文面が読者に語りかけるような語学春秋社の『実況中継シリーズ』です。楽しくて英語以外の科目の本も読み、自分が参考書を書くときもこのような文体にしたいと参考にしています。

その他にも「恩書」はたくさんあり決めきれませんが、マーク・ピーターセン先生の『日本人の英語』(岩波書店)を読んだときには、頭を殴られたような衝撃を受けました。英語ネイティブの観点から、例えばこの文章の冠詞が抜けると、こうネイティブにこう聞こえると解説しています。ある程度自分の言いたいことが英語で言えるようになったと考えている中上級者にお勧めします。

Q5:学習をサボりたくなったときどうしていましたか?

そうですね、正直に言うと語学学習は自分が楽しいと思えることしかしないのでサボりたくなったことがないです。ずっと人生の恋人のようなものです。
あとは日常の仕事や友達との会話で英語や中国語を使っているので、普通のRoutineに取り込まれていると考えています。
ですが、私と同じ考えでなく受験や資格取得で頑張って学習をしなければいけない方もおられると思います。別の観点からアドバイスしましょう。

私はこのnoteの別の企画で、体を鍛えることを語学学習に関して記事を書きました。
正直言うと体を鍛えるのはしんどいです。サボりたくなることは多々あります。
そんなときはどうするか? その日の目標を極小化します。
例えば、ジムで普段1時間5種目ぐらいトレーニングをしていたら、一種目10分だけやってあとはサボろうと決めます。実際に本当にサボることもありますが、多くの場合一種目やると気分が乗ってきてしょうがないから、他の種目もやるか、となる場合が多いのです。やる気というのは不思議なもので、嫌なことでもやっていると自然とでてくることがあります。

Q6:英語学習以外に大事なRoutineはありますか?

はい、サウナに入ることです。
サウナの健康効果に注目していますが、それよりも大事なことがあります。サウナに入るときは当然、本もスマホもなくタオル一枚でサウナに入ります。サウナの中で、自分の頭でいろいろ考え事をします。人生のこと、仕事のこと、その他答えのないテーマをどうしようか、こうしてみようかと考えてみます。
社会人になった頃の仕事は教科書的な答えのあることが多く、その時は裁量も権限も小さいものです。私の今向き合っている課題はある事業の戦略や投資計画をどうしていくかなど答えのないことが多いです。そのようなことを考えるのにスマホや本はないほうがいいと感じます。自分自身を外部情報から遮断して頭の中のありもので何かを決めるというRoutineを大事にしています。

Q7:学生時代、英語は得意でしたか?

中学校の頃は超不得意で、一念発起して勉強し始めてから自分のアイデンティティの一部となるほど得意になりました。
小学校から短大まである学校に中学校から入ったため、高校受験もする必要がなく、全く危機感がない状態でした。
「高知には外国人来んから英語いらん」と主張する生意気な中学時代でした。いらんというより、中3になってもbe動詞の区別もできなかったぐらいです。その後一念発起する話は別の機会に……。

Q8:座右の銘もしくは好きな言葉を教えてください(その出所の情報も)。

座右の銘と次の質問の尊敬する人物は、私自身結構いろいろなものに影響され、オンリーワンはありません。昔いいなと思った言葉も歳を重ねると感性が変わるので、そう思わなくなったりするものです。ですが、最近心に残った言葉を紹介します。

愚かな者を道づれにしてはならぬ

これはブッダの言葉とされています(出典:岩波書店『ブッダの 真理のことば 感興のことば』中村元訳)。
この言葉の前後には、もし自分が旅に出て自分より優れたものに出会えず、また自分と等しいものにも出会えなかったら、(愚かなものを道連れにせず)迷わずひとりで行け、という解説があります。というのは人より多くの結果を求め、人より抜きん出ようとすると、最初は多くの人の理解を得られないことが多いと思います。そんなときに周りの理解が得られないからと言って怯まないことです。

繰り返しますが、私はど田舎の生まれで、学生の頃は勉強するのはダサいなんて風潮が周りにありました。当然、英語の独学を始めた頃は周りには変人扱いで後ろ指をさされることが多かったです(今でも変人扱いですが)。そのような人たちが周りにいたら自分は自分、理解してもらえなくても結構、と割り切ります。
自分の世界観を持ち、時には孤独を恐れないことです。

Q9:尊敬する人物は誰ですか?(その人の詳細も)

前の質問同様、年齢を重ねると変わります。いろんな分野に様々な尊敬する人がいます。

自分の考え方に影響を与えている方のひとりに三浦雄一郎さんがいます。
三浦さんは、プロスキーヤーとして活躍され、スキー滑降で世界七大陸を達成するなどの業績を残します(64歳の時)。
ところがその後目標を失い、不摂生な生活を送り、健康状態も悪化、札幌の531メートルしかない藻岩山を登るのにも息切れしてしまう状態に。
目標を失っていた三浦さんを一念発起させたものは、実父の敬三さんが99歳にしてモンブラン山系のヴァレブランシュ氷河からスキー滑降を成し遂げたことでした。夢と目標を持つことを意識し、70歳でエベレストに登頂することを目標とします。
そして自分に負荷をかける訓練を始めます。東京を歩く時も足に重りを付け、ザックにも重りを入れて歩きます。重りは少しずつ増えていき、片足に10キロ、背中に30キロまで増やしたそうです。その後、三浦さんは70歳、75歳、80歳と3度もエベレスト登頂に成功します。70歳のときの登頂では世界最高齢の記録でした。

登山が好きだった私はこのエピソードに感銘を受けました。当時は仕事上の悩みもあり、もっと楽にならないか、楽な仕事はないかとばかり考えていました。(三浦さんはそうは発言されていませんが)、自分に負荷をかけて鍛えて強くなれば、普通の負荷が楽に感じるはずと解釈した私は、その後の仕事にも語学学習にもこの考え方をもって取り組んでいます。

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“負荷をかけ自分を鍛えると普段楽になる”の考えの元、
低山に10キロの砂鉄のベストを着て登る

Q10:英語学習者にアドバイスをお願いします。

英語でholy grail(聖杯)という言葉があります。
これはキリスト教の概念で詳しい説明は割愛しますが、「聖杯伝説」など聖杯を求めて騎士が旅をする話などが有名です。現代では比喩的に「手に入れるのが非常に困難なもの」という意味で使われます。

語学に限らず、ある学問を極めようとすれば、それは人が一生をかけて取り組むことになると思います。「90日でペラペラに」、「英語マスター」なんて教材の売り言葉に踊らされてはいけません。
これは聖杯を追い求める旅のようなものです。一生かけても聖杯は見つからないかもしれない。ですが、究極を追い求める旅に出ること、そして旅の途中でいろいろなことを経験し成長すること、これこそが我々の人生を豊かにしてくれると思います。
語学学習は一生かける旅、その道程を一歩一歩、自分のペースで歩いてきましょう。


質問に答えてくれた著者:恒石昌志(つねいし・まさし) 
高知県生まれ。高校の時から英語を独学し、19歳でオーストラリアのシドニーに渡りThe University of Sydneyで英語を学ぶ。その後、現地で経営学を学び、日本に帰国。
現在は東京に在住し、ITサービス・インフラ構築などの海外プロジェクトに携わっている。独学で英検1級、TOEIC990点、通訳案内士(英語)、観光英検1級、情報処理技術者資格などを取得。生まれ故郷高知県の観光特使(学識経験者)も2013年から務めている。所属学会:日本言語学会

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