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  • 社長コラム

「売れてる本」の定義(出版業界こぼれ話)

「あの本、売れてますか?」「売れてますよ~」
書店員さんや出版社の人と会うと、こんな会話をよくします。
軽い挨拶代わりで、会話のきっかけになるので便利なんです。
「儲かってまっか?」「ぼちぼちでんな」みたいな感じです。

自分で言っておいてなんですが、この「売れている」という言葉、とても曖昧な言葉でして、実はいつもモヤっとしています。

「売れている」は、実際は「よく売れている」もしくは「たくさん売れている」を省略した言葉だと考えられます。
しかし、何冊売れれば「売れている」と言えるかは、書店と本によって千差万別です。
その書店の売上規模(集客力)や、その本の特性によって、全く異なるのです。当たり前ですけど。
そこを合意しないまま話しているので、例えば

出版社:「どうですか、この本、売れてるでしょ?」
書店さん:「いや~あまり売れてないね~」
出版社:「(えー、他の書店さんよりもたくさん売れてるんだけどなぁ)」
(※ 出版社の想定より売れていても、その書店さんが期待する水準に達していない)

とか

出版社:「あの本、売れてますか?」
書店さん:「よく売れてるよ!」
出版社:「(あれ?データを見るとそんなに売れていない気がするけど)」
(※ 同ジャンルの他の本よりも売れているので書店さんの評価が高い)

といったすれ違いが日々起こっているのです。

「このお店のこの売り場で、このジャンルの本を置いてもらった場合、特定の期間(1週間、1か月など)で何冊売れれば“売れた”と認識されるのか?」
というように具体的な目標設定を相互に確認すれば、こうしたすれ違いは避けられるのですが、実際にはいつも確認できているわけではありません。

認識の違いがあるといろいろよくないので、曖昧な使い方は控えようと思うものの、「売れてる」というのはやっぱり便利でついつい適当に使ってしまうのでした。
「どう、売れてる?」という会話は景気づけの挨拶みたいなものですから、今後もなくならない気がします。
理屈抜きの「なんか売れてるぞ!」という勢いが書店さんの売り場に活気を与えることもあるので、ムードもあながちバカにできません。
ともあれ「誰がどう見ても売れている」というくらいのヒット作なら、思う存分「売れてますね!!」と言えるので、モヤっとすることはなさそうです。
出版社としては、ぜひともそこを目指したいところです。

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